「花ざかり」を撮るコツ!

「花ざかり」とは、花の旬、つまり花がもっとも美しい時です。花は咲き始めから満開へ、盛りをすぎてやがて枯れていきますが、花によっては必ずしも満開が一番美しい時期とはかぎりません。
ひとつの花でも咲き始めから散るまでの過程を眺めていると、これまでになく生気に満ちた輝かしい姿に「あっ、今が一番!」と心を打たれる瞬間があるものです。それが「花ざかり」というものでしょう。
今回はその「花ざかり」をテーマにした、花が与えてくれる元気や感動を表現した写真に取り組みます。
                                             塾長:古屋光雄

【作例1】
画像

〈野バラ〉 2005年 神奈川県・横浜市郊外
F5.6 1/60秒 フジクローム100
キヤノン EOS 1N+EF100mmF2.8マクロ ソフトフィルター使用
花の美しさより、情熱的な深紅に野バラの持っている野生味を感じて写した1枚


●花をテーマにした写真表現のコツ

花を美しく撮る<コツ>については、この投稿塾でも「春の色を撮るコツ」で解説しました。

花の撮り方の基本は大きく分けて次の3つでした。

● 花そのものの写真
● 花のある風景写真
● 花を主役にしたイメージ写真

この基本を踏まえた上で、テーマを表現するコツを考えてみましょう。

【作例2】
画像

〈アラジン〉 2010年 山梨県 山梨市
F8 1/250秒 ISO 200
キヤノンEOS 50D+EF100mmF2.8 
私の好きな「アラジン」という名のチューリップでわが家の庭の定番ですが、細く尖った花弁が天に向かっていっせいに咲くと、明るい未来がくる予感がします。デジタルカメラは赤い色が苦手で、順光や斜光線などノーマルな光ではなかなかきれいに再現してくれません。逆光線によってコントラストを上げ、立体感を表現しました


1) 花が主体でも、花の風景でも「花のさかり」を写すという撮影意図をしっかりもつことです。
さかりを見るときの注意点は、日頃から植物をよく観察し、個々の植物の生態や形態の特徴を知り、掴んでおくことですが、これはなかなか大変な努力です。

現実的には偶然美しい花と出合って、それを撮ることになります。その状況の中では冒頭にも書きましたが、かなり主観的な判断に委ねられるでしょう。
要はそうした自分なりの「花ざかり」をしっかり見る人に伝えられるかどうかです。

【作例3】
画像

〈コオニユリ〉 2005年 山梨県 乙女高原
F5.6 1/60秒 フジクローム100
キヤノンEOS 1N+EF100mmF2.8マクロ 
高原のすがすがしい空気感と花の生命力を表現しました


【作例3】は高原の花ですが、シベについた花粉の状態でさかりを知ることができるので、咲いているたくさんの花の中からもっとも状態のよいものを選んでシャッターを押しています。
現場では花の旬とそうでないものの違いは醸し出す力強さや美しさにおいて歴然としています。この花について私は少しだけ知識を持っていたことがよい作品につながったと信じています。

2) 花の旬を見極めることがこの場合はもっとも大切になります。群生している場合、さかりを過ぎた花が画面に入らないように、思い切ったフレーミングを考えてみる試みも大切です。

【作例4】
画像

〈チューリップ〉 2009年 神奈川県・横浜市郊外
F8 1/125秒 ISO 200
キヤノンEOS 5DマークⅡ+EF24-70mmF2.8L 
チューリップの花が上に向かってぐんぐんと伸びる元気なイメージを表現するために、アブノーマルなカメラアングルを選んでみましたが、作品としては不出来です。このような試行錯誤をたくさん積み重ねることが上達へつながる道なのです


3) 花の強い生命力を表現するための光の角度にこだわりましょう。具体的に作例で解説します。

【作例5A 】
画像

2010年 山梨市・牧丘町(以下B,Cも同じ)
樹齢150年の枝垂れ桜。幾度も足を運び、撮影時期を待ちながら古木のすばらしい生命力をどう表現するかイメージしていました。この写真でも順光線で捉えた古木の堂々とした風格は表現できていますが、周囲の建造物が目障りになるので木の全体像を撮るのは断念しました


【作例5B】
画像

朝の斜光線で撮るのがねらい。立体感、色のコントラストも申し分ないけれど、花の美しさにとらわれすぎて強い生命力の表現になっていません

【作例5C】
画像

カメラポジションとアングルを変え、逆光線により枝垂れの樹形や樹勢を主題にシルエットで表現。イメージに近い作品になりました

花の写真はあまりコントラストが強くないほうがよいとされていますが、既成概念にとらわれないで被写体を眺めましょう。

光を見るコツは【押しかけ写真塾】挑戦編「写真の心にチャレンジする」の第3回「光の方向と質感の描写」を参考にしてください。

【作例6】
画像

〈クレマチス〉 2009年 横浜市郊外
F8 1/45秒 ISO 400
キヤノンEOS 5D マークⅡ+EF100mmF2.8マクロ  
植物たちも水から命をもらいました


【作例7】
画像

〈ルピナス〉 2000年 北海道・美瑛
F8 1/250秒 ISO 400
キヤノンEOS D30+EF28-70mmF2.8L  
初めてデジタルカメラで撮影した写真。不安と緊張感を覚えつつ、ただひたすらこの広大な美の宇宙を写し取ることに夢中でした


【作例8】
画像

〈公園の花壇〉 2008年 神奈川県・横浜市山下公園
プログラムオート
キヤノン Power Shot A640 
カメラのポジションやアングルは主題となる花に応じて決まるので、背景についてはできるかぎりうるさくならないよう絞りの調整でボカスなどの配慮が必要です


一般的には〈作例8〉のような状況が多いと思います。遠景を環境として取り込むときは、視点を下げてローアングルで構成することも考えてみるといいでしょう。これは一例で、画面構成についてはケースバイケースで、すべてに通用する決まりはありません。

前回の会話編<リンク>の中でも触れていますが、古来から日本人の生活には春の野遊びに出て、花を含め植物の緑から元気をもらう習慣がありました。緑への愛着は人が進化の過程でDNAに取り込んだのでしょうか。皆さんも休日にお弁当を携え、美しい5月の「花ざかり」を写してください。


この記事へのトラックバック